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だれかのいとしいひと
私の好きな作家さんのひとり、角田光代さんの短編小説集です。
絵本紹介のビジュアルブック「MOE」に掲載されたもの6作を含む8作品が収めされています。
表紙のイラストが酒井駒子さんっていうところも、絵本好きの心を上手い具合にくすぐるよなぁ

帯には「負け犬予備軍必読! どんなに好きでも、もう二度と会えない」とあります。

この本を手に取った瞬間、「・・・私って負け犬予備軍なのか?!」なんて疑問が頭をよぎった。
なんでこんな帯をつけるのよ、全く。手にとりずらいじゃないか

転校生じゃないからという理由で振られた女子高生と“転校生たち”との交流を描いた「転校生の会」。
元カレの部屋に忍び込み忘れ物を盗もうとする女性ライターの「ジミ、ひまわり、夏のギャング」。
親友の彼氏と付き合ってしまう病癖のある女子大生の「バーベキュー日和(夏でもなく、秋でもなく)」。
もうすぐ別れるであろう彼氏と姪っ子をつれて公園デートに出掛けるタイトル作「だれかのいとしいひと」。
一人ハワイで誕生日休暇を過ごす羽目になったOLの「誕生日休暇」。
家族、恋人、会社・・・と信頼できると思っていたものをどんどん失っていく「花畑」。
喫茶店で“完璧なキス”について思い出と妄想に浸る男の子が主人公の「完璧なキス」。
そして、だらだらと付き合うことで一緒にいることがルールとなってしまったカップルが、ひょんなことから向かい合うきっかけのエピソードを描いた「海と凧」。

どれも、最終的にはハッピーエンドではなく、早かれ遅かれ“終わり”が来る事を感じさせるせつないお話ばかり。
でも、ちょっと悲しく冷たい余韻を残すものもあれば、清々しい気持ちにさせてくれるものもあったり、「せつない」っていう感情にも、いろいろな種類があるんだなぁと思わせてくれる一冊

特に印象に残ったのは、「ジミ、ひまわり、夏のギャング」と「完璧なキス」。

前者はちょっとした演劇を見ているような爽快感がある。
作品の中でテンポよく時間が刻々と進んでいく。
泥棒のような真似をして忍び込んだ彼の部屋でとった行動に「私でもそういう風にするだろうなぁ。そう思うだろうなぁ」という点がたくさんありました。

一方、「完璧なキス」は、吉祥寺のドトールで道行く人を眺めながら小一時間もの間ぼーっと過ごす男の子の頭の中が舞台。
氷でどんどん薄まっていくコーヒーをすすりながら何かを考えてる人っていう、どこにでもありそうな風景を丁寧に書き上げている。
そんな風にして彼は、ほんの一瞬思い出に浸り、お店を出て、これからのストーリーを描いていくんだろうなぁ、というその後の行動を知りたくなるようなそんなお話

それにしても、角田光代さんっていろいろな表現の仕方ができる人なんだなぁというのが、短編を読むとよくわかります
どこにでもあるような日常を描いているのに、その一つ一つが実はものすごくドラマチックなんだってことを丁寧に紡ぎだしているなぁというのが、私の角田さんの文章に対する感想。

代表作として挙げられる直木賞受賞作「対岸の彼女」や映画化された「空中庭園」というメジャーどころをまだ読んでいないので、これから是非読みたいと思います
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