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KATAGAMI Style展行ってきました
三菱一号館美術館で行われていた(この記事を書いている5/27が東京最終日)「KATAGAMI Style―世界が恋した日本のデザイン もう一つのジャポニスム」に行ってきました。
http://katagami.exhn.jp/

最終日前日に滑り込みで観に行ってきたんだけど、入場まで30分待ちの大混雑!
服飾やインテリア、グラフィックなどにも及ぶ展示内容ということもあって、訪れる人も絵画展よりも多かったのでは?と思います。

型紙とは、絹や綿の布に図柄を染め付ける際に用いられる伝統的な道具。紙を柿渋で加工することにより補強し、また耐水性・防虫性を高め、自家製の特殊な彫刻刀を用いで様々な形を彫りぬいてある。
図柄の部分を防染糊で塞いでから染色するため、図柄は生地の色のまま残り、それ以外の部分が染料の色に染まる。

遠目から見ると無地のようでも、近づいてみると実に細かい模様が施されているものを粋としていた江戸の町人文化。そんな“粋”を作り上げるための消耗品だった型紙。
展示では実存する型紙が多数展示されているんだけど、「これ、どうやって作ったんですか?!」っていうくらい細かくて延々と単純作業を繰り返して完成させるものがたくさん。
今でこそパソコンがあって画像ソフトのコピー&ペーストで同じ柄の複製は簡単に出来てしまうけど、すべて手作業でやっていたと思うとそのために費やしている苦労ってどんだけかと考えてしまいました。これこそ職人技の神髄!
具象絵画の西洋文化圏の人から見たらとてつもない衝撃を受けたっていうのも分かる気がします。

展示は、約400点の展示を通して、ジャポニスムの流行によって日本の美の世界が西洋に渡り、その国々でどう昇華されたのかを紐解いていく構成になっています。

イギリス・リバティ社が型紙をベースにテキスタイルを作っていたり、フランスではアール・ヌーヴォーになりラリックやガレが登場、ミュシャは装飾性に富んだポスターで人々を魅了。
布や服の分野では、絹や綿からビロードや織物と質感が変わることで重厚感が増して、同じ模様でも全く異なるものに変わっていくし、身の回りを飾るためのもの(インテリアやカーペット、壁紙など)に取り込まれていく様子もよくかわる展示内容でした。

韓国人の友達と見に行ったんだけど、韓国の伝統的民族衣装=チマチョゴリには着物のような柄はないんだそう(あっても飾り襟くらいだって)。
同じアジアでも、模様を身に纏うことで個性を演出していた日本と、着物はシンプルで飾りでアクセントをつけていた韓国っていう文化の違いもわかったひとときでした。
なかなかの盛況っぷりだったこともあり、いろいろ話しながら展示を観れたのが今回はとてもプラスになったかも!

これから京都→三重を巡回するらしいので、気になる方は是非!
自分たちの先祖はすごいなぁ〜と純粋に感じることが出来る、そんな美術展でした。
art 17:23 comments(0)
生誕100年 ジャクソン・ポロック展
STYLE'S CAKES&Co.でおなかを満たした後は、感性を充電のために竹橋の東京国立近代美術館へ。
「生誕100年 ジャクソン・ポロック展」を観てきました。http://pollock100.com/

抽象画や現代アートは絵を通して考えることが多いからあまり好んで観に行くほうではないんだけど、ポロックの作品は実物を見てみたかった。
何を考えながら、何を表現したくて、こんな作風になったんだろう?

ポロックが最も注目を浴びた時期の作品は「オールオーヴァーのポード絵画」と言われるそうです。
キャンバスに均一に下地を塗った上に、絵具を流し込み、撒き散らす。
出来上がる作品は、キャンバスの中に「モノ」がない絵。存在しているのは絵具のみ。

ただ気まぐれに絵具を撒き散らしているように見える作品だけど、近くで見ると、実に様々な色が使われているし、作品によって使う色の組み合わせや余白の取り方もずいぶん違う。
下地の色と流し込まれたアクリル塗料の質感の違いが画面の中に微妙な動きを与えているようにも見えました。超人的な色彩感覚とバランス感覚を持ってないと、こんな作品は生み出せないだろうなぁと、絵と対峙しながらただただ感じていました。

それまで、「“何か”が描かれていて当たり前」だった絵画の世界を打ち破ったポロック。
何かを描きたかったんじゃなくて、自分自身をキャンバスに映したかったんだろうな。
キレイとか美しいとかそういう基準じゃなくて、自分が存在した証としての絵画。

会場外にポロックのアトリエが再現されているコーナーがあるんだけど、色とりどりの絵具が散らばったフローリングシートの上に立っていると、自分が絵の中の一部になるという感覚が、ほんの少しだけ味わうことが出来ます。

称賛された作風を捨て、新しい表現を常に追い求めた画家・ポロック。
若い頃から精神病を患い、44歳で飲酒運転で事故を起こしてこの世を去った一人の人間・ポロック。
映画化されたらすごくドラマチックだろうなぁ…なんて思ってたら2000年に映画になってました。今度観てみよう(映画は奥さんのラブストーリーがメインらしい)。

5/6まで東京・国立近代美術館で開催されてます。
出展数も64作品とそんなに多くないので、ゆっくりと楽しむにはいい展覧会だと思います。

art 18:32 comments(0)
フェルメール≪地理学者≫とオランダ・フランドル絵画展
先日、仕事を早めに切り上げて渋谷・Bunkamuraザ・ミュージアムで5/22まで行われている「シュテーデル美術館所蔵 フェルメール≪地理学者≫とオランダ・フランドル絵画展 」を見てきました。

17:30頃に到着して19:00閉館なのでちょっと急ぎ足の鑑賞になっちゃったけど、さすが平日
絵の前に二重三重の人だかりができることはまずなくて、ゆったりと見ることが出来ました。

今回の展覧会の目玉は、なんと言ってもフェルメールの≪地理学者≫。
サイドには当時の地球儀やコンパス、地図など、絵の中に描かれている小道具が展示されて、絵は臙脂色のシックな壁紙の上に飾られ、低めの柵で守られていました。
絵から数メートル離れたところには刺繍が施されたソファが配されるなど、そこだけがまさに特別な空間。

秀逸な遠近感の表現といい、柔らかく差し込む光の具合といい、さすがフェルメールとやっぱりため息が出るような美しい絵(男の人が描かれているけど“美しい”と思えた)でした。

他にも、時同じくして国立西洋美術館で行われているレンブラントや、フランダースの犬で有名なルーベンスの作品(正確に言えばルーベンスとその弟子による)があったりと、有名な画家による作品も含めて95点が出展されています。

今回の音声ガイドは佐々木蔵之介さん
ガイド24点のうち、ほぼ半数は佐々木さんが当時の画商としてコメントするというお芝居形式。
音声ガイドって解説を語りかけるのが一般的なだけに今回は実に面白い試みでした。
役者さんだからこそできる音声ガイドで、絵画展をより楽しむ付加価値をプラスしていたと思います。
解説バージョン/お芝居バージョンみたいに、いくつかバージョンを作ったら、リピーターも増えるかも?!

2004年に国立西洋美術館で行われた「ウィーン美術史美術館所蔵 栄光のオランダ・フランドル絵画展」は宗教画・風俗画も含めて人物画が多かったのに対して(この時にフェルメールの≪画家のアトリエ≫を見てた。現存するのが30数点しかないんだけどもう2つも見てた!)、今回のBunkamuraは静物画や風景画も多く出展されていたのが特徴的でした。

私はフランドルの風景画が好きなので、フェルメールの他に特に気に入った2点、柔らかな陽射しに包まれた夕暮れ時の運河を描いたパウルス・コンスタンテイン。ファルグの≪都市から見たライデンのハールレム門≫と、真冬の凍った川でスケートを楽しむ人や薪をする人を描いたルーカス・ファン・ファルケンボルヒの≪凍ったヘルデ川とアントワープの景観≫の絵葉書を買ってきました。

http://www.vermeer2011.com/
art 17:50 comments(0)
東京駅周辺3美術館はしごデー
最近甘いものの記事ばかりですが、食べてばかりなわけじゃないんですよってことで、昨日は東京駅近辺にある美術館を3つはしごしてきました。今年、初・美術館です。
買ったお菓子の分は動いて消費しないとねってことで、今回はできるだけ徒歩移動

(1)ブリヂストン美術館(東京八重洲口→八重洲)
「なぜ、これが傑作なの?」と銘打ったコレクション展示。
実は初めてブリヂストン美術館に行ったのですが、あまりのコレクションの幅広い展開にもうビックリ
エレベーターホールで、いきなりロダンの「考える人」がお出迎えしてくれるというすごさ。

レンブラント、ミレー、マネ、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャン、ロートレック、マティス、マリー・ローランサン、モディリアーニ、ピカソ、パウル・クレー…と美術館にあまり行かない人でも名前だけは聞いたことがあるんじゃないかという有名画家ばかり(しかもその画家をフューチャーした企画展なんてやったら集客間違いなしな人気者ばかり)。
近代日本画家も錚々たる面々の作品が収蔵されています。
さらには歴史の教科書で観たようなシュメール文明、エジプト文明、ギリシア、ローマの出土品まで

時間帯もよかったのか、コレクション展ということでそこまで話題性もないからなのか、人ごみもなくゆったりと鑑賞できました。

今回の展観のタイトルになっている「傑作」認定されている作品の前には一人掛けの椅子が配置されていて、空いていればその椅子に腰かけてじっくりと絵と対話するように鑑賞することが可能です

(2)出光美術館(八重洲→京橋→丸の内→日比谷)
ブリヂストンを見たら近美に行くのが当初の予定だったんだけど、「洋画を観たならせっかくだから日本画も…」って思い、急きょ出光美術館をプラスしました。

『東京駅周辺美術館MAP』っていうのが参加している美術館4館(ブリヂストン、出光、三井記念、三菱一号館)が企画したものがあって、このMAPを持って別の美術館へ行くと入館料を割り引いてくれるというサービスをやっています。
このおかげで、出光の入館料が1000円→800円になりました

出光の企画は新春らしく「酒井抱一生誕250年 琳派芸術ー光悦・宗達から江戸琳派」展。
会期の前半が金を基調にした「煌めく金の世界」、2月からの展観は銀を基調ろした「転生する美の世界」とガラリと展示替えが行われるそうです。

さすが琳派人気恐るべしっていう感じで、館内超混雑
巻物も軸物も人の頭越しに見なきゃ全く見れない盛況ぶり。

そんな中でもひときわ目を引いたのは江戸時代に描かれた「伊年」印の『四季草花図屏風』。
六曲一双の金屏風に春夏秋冬の季節の移ろいを描かれているのですが本当のお見事。
日本のボタニカルアートってこういう世界だよなぁとしみじみと思うとともに、ここに描かれた草花を私はどれだけ知っているのか?と振り返ると、その知識のなさに悲しくなりました

展示室は3つ。大作が数点、軸物、巻物、工芸品で構成されています。
ブリヂストンと比較するとあっという間に終わってしまった印象…。

(3)東京国立近代美術館(日比谷→丸の内→竹橋→九段下)
ずっと皇居に沿って歩いていくのですが、この距離が結構あるんです。。。
だからと言って地下鉄に乗るような距離でもないしなぁ…っていう気持ちになる微妙な距離感の近美。東西線しか通ってないしね。

今回は東山魁夷が見たいっていうその一心だけで、常設展を観に行きました。

お目当ての3階までショートカットして行ったら…「道」が観たかったんだけど展示されていなかった…
その代わりにあったのは「冬華」。
雪原の中に真っ白な大きなとたくさんの枝を広げた木が1本。薄曇りの中で白い太陽の光が柔らかく広がっている作品で、その前に10分近くじーっと座ってると時間が止まっているような感覚になりました。

あともう1点、ずっと見てても飽きなかったのが日高理恵子の作品。
こちらも樹を描いたものなんだけど、特徴的なのは真下から見上げたアングルで描くことで、その先に広がる空(空間)へ気持ちが行く作品だということ。モノトーンで描かれているから、この木の色は?とか空の色は?とかいろいろ考えることが出来て、たぶん20分以上は観てたと思う。いつまで経っても見飽きない、素晴らしい作品です。


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近美からの帰り道は、九段下→神保町→御茶ノ水とさらに歩き、美術館ツアーを終えました。

今回の美術館ツアーで一番よかったのは、やっぱりブリヂストン美術館だなぁ。
一号館美術館も気になってるんだけど、カンデンスキーはそこまで興味がないので3/1〜のマリー・アントワネット展に行きたいと思います。
前述のMAPを持っていけばまた200円引きになるし




art 18:51 comments(0)
没後120年ゴッホ展ーこうして私はゴッホになった


文化の日、母と一緒に国立新美術館で行われている「没後120年ゴッホ展ーこうして私はゴッホになった」を観に行きました。

まず入場は10分待ち。
祝日のお昼時なのに10分っていうのは実はラッキーかもしれないけど、いやぁ、中がめっちゃくちゃ混んでました。ゆっくり余裕なんてなし。

“ゴッホ展”なのですが、ゴッホと縁があったり親交があったゴーギャンやモネの作品もあったり、ゴッホが下積み時代に描いた素描も数多く出展されていました。
パンフやチケットにも使用されている『灰色のフェルト帽の自画像』と『アルルの寝室』『アイリス』あたりがこれぞ誰でも知っているゴッホ!っていう作品で、『ひまわり』があるわけでもなくゴッホのテーマカラーとも言える黄色の作品が多かったわけでもなく、浮世絵の影響を受けたと説明するなら1点くらい浮世絵を真似した作品を持って来ればよかったのにとか、人物を追うならばレプリカでもいいから弟・テオへの手紙を出してもよかったのでは?と思ったり。
成熟期のゴッホの作品展というより、サブタイトルに「こうして私はゴッホになった」とあるようにゴッホの足跡と画風の変遷を追う内容の展観だったという印象です。

ゴッホの自画像についてはwikipediaのこちらがオススメ。画風の変遷が一目瞭然。
「代表作が自画像っていう画家はどれくらいいるか」と考えた時に、やっぱりゴッホの自画像は間違いなくその筆頭に挙がると思うし、美術の専門教育を受けていない人でも自画像や写真を観てピシャリと言い当てられるのって、ゴッホやダリくらいなんじゃないかなぁ(意外とピカソってわからない気がする)。
そう考えると、ゴッホの自画像はただ「自分を書いてみました」ではなく、そこにゴッホの魂が宿っている、そんな風に思ったりします。

強烈に印象に残ったのは最晩年の作品(っていってもゴッホは37歳でなくなってるから、そんなにおじいさんではない)。
精神を病み、自ら耳を切り落とすような行動に出た後のゴッホが描いた作品たちは、タッチも作品が持つエネルギーも本当にバラバラで、うねうねとした筆致に不安定な精神の起伏を目の当たりにした気がしました。
その中の1つ「オリーブ畑と実を摘む人々」と、ゴーギャンの「ブルターニュの少年と鵞鳥」の色彩が似ていたのには、仲たがいして決別してしまった2人の画家の繋がりが見えたような気がしたり。最終室は本当にいろんなことを想像した展示でした。

今回美術短大出身である母と一緒に見に行って「白と黒の素描の世界から色彩豊かになっていく過程は光をどう捉えるかコントラストで観ていると思う」とか、「正面を描くと動きは止まっているように見えるけど背中って行動が続いていくように見える」とか、そういう見方もあるのかっていう驚きがあったのも面白かったです。

わずか10年の画家生活のうち、2年を素描で費やし、その後パリで多くの画家仲間と交流したくさんの経験を得て、アルルに移り住み自らのスタイルを確固たるものにしたゴッホ。
自分と対峙する時間が多かったり理想が高いが故に他人とも衝突してしまい、自分自身を傷つけてしまうようなデリケートな心の持ち主。
生き急ぐように絵を描き続けたけど37歳で亡くなるまでに売れた作品はわずが1点のみ。
絵を描くことが本当に好きで、情熱的(激情的といってもいいかも)であり、ものすごく努力家だったことが、亡くなった後に評価され、こうして120年たった今日に開催される展覧会を超満員にするっていうのは、なんだかとてもドラマチックだなぁと思いました。

休日は確実に混んでいるので、閉館を延長している金曜午後とかが比較的ねらい目かもしれません。
展覧会は12月20日(月)まで。


art 23:40 comments(2)
没後25年 有元利夫展 天空の音楽


東京都庭園美術館が夜間開館を実施していたので会社帰りに隣駅の目黒で下車。
没後25年 有元利夫展 天空の音楽」を鑑賞してきました。

建物そのものが芸術品である庭園美術館。
植物自然園の中に建っていることもあって、夜の敷地内は音だけじゃなく空気もなんだか静か。
なんだか時間が止まったかのような感覚になりました。
宝箱のようなこの美術館で、有元利夫の作品を観ることができるなんてなんて贅沢。

行った日はちょうど故人が愛したバロック音楽をフルートで奏でるというミニコンサートイベントが行われていて、第1室であるエントランスホールは超満員でした。
目で美術を楽しみ、耳で音楽を楽しむ。最高の贅沢ですね



今回の展覧会ポスター。これを見て「あ、この絵の画家さんね」って思う人も多いと思う。

洋画家だけど日本画の岩絵の具を使ってフレスコ画のように作品を描く作風。
「没後25年」だけど、作品はあたかも何百年も前からあったような存在感。
風化を美しいものと捉えながらも普遍的。
こんな作品を20代から描き、そして38歳という若さでこの世を去った有元さんは(しかも一度サラリーマンを経験してる)、とてもぼんやりとした言い方だけど、やはり“選ばれた人”なんだろうなぁと作品と向き合いながら強く思いました。

青とも緑とも言えない空の色、そして深く染み入るような臙脂っぽい赤。
曲線が多い作品の中に緊張感を与えるような直線や格子模様。
包み込むような空気感が好き。
一見「静」の画面だけど、じーっと作品の前に立っていると(先入観のせいもあるとは思うけれども)リズムなのかメロディーなのか音楽が響いてきます。私の中では4拍子じゃなくてワルツのような3拍子の軽やかなイメージ。

ただ、それもたくさんの苦悩の時間の上に成り立った軽やかさなんだということがこの展覧会で一番印象強く残ったことでした。
それを教えてくれたのは2階の最終室にあった2つの未完成作品。

制作年が入っていないかったので、亡くなる直前に手掛けていらっしゃった作品なのかもしれないんだけど、まだ下塗りを数回重ねてなんとなく作品の描きたいものがわかるという程度のキャンバス。女性を描こうとした作品と、もう1つは赤ちゃんを描こうとしたもの。

その横に添えられた言葉は(うろ覚えなのでニュアンスだけ伝われば。)
理想の姿は遠くに見えているのに、一歩先が見えない。遠くははっきり見えるのに、足元はどんどん暗くなっていく。
理想は見えるのにどう近づいていけばいいのかがわからない、そんな中で毎日試行錯誤を繰り返しながら一筆一筆描いていたんだなぁと思うと、その果てしなさにクラクラとめまいがしそうでした。

激しいエネルギーを放つ攻撃的な芸大の卒業制作からどんどん毒気が抜けるというか昇華していくような作品の変遷をたどる絵画、版画、立体作品およそ100点の展覧会です。



art 22:01 comments(0)
アール・デコ時代の工芸とデザイン展


国立近代美術館工芸館で行われている「アール・デコ時代の工芸とデザイン」展にふら〜っと行ってきました。

この工芸館、一般入場料200円近代美術館の常設展との共通券でも420円という格安で美術漬けの1日のおくれる素晴らしいスポットなのです
建物自体も重要文化財認定を受けているので、目黒の庭園美術館と同様、建物も楽しめる素敵な雰囲気の美術館です。
さらに、一部展示作品を除き所蔵作品の撮影も可能みたい(撮影希望者は受付で申請する必要ありです)。

さて、話を展覧会内容に戻しますと、アール・デコの時代=1920〜30年代の所蔵作品が展示されています。
単なるアール・デコ展と違うのは、展覧会タイトルの通りその時代における日本の流行もまとめているところでしょうか。

東洋初となる地下鉄が開業。
モダンな装いが流行し、文化の発信地として百貨店が皆の憧れ。
日本にもグラフィックデザインという概念が入ってきて、そしてその流れは日用品の美=民芸運動へと続いていく一連の流れが5つの展示室に凝縮されています。

第1室のリトグラフたちのかっこよさには惚れ惚れしちゃいました
鉄道や豪華客船、キャバレーなど、「広告」として制作されたものだけど、どれもこれもかっこよすぎ図録やポストカードがないのが、本当に残念
あの時代のフランスのグラフィックデザイナーたちのセンスの良さにはホント脱帽です。
印象に残ったのが、ポール・コラン(参考:http://www.kiya.co.jp/colin.htm)とカッサンドル(http://www.kiya.co.jp/cassandre.htm)。
特にカッサンドルの「ノール・エクスプレス」はラインの上に人のモチーフが乗せられているセンスに感動でした

第6室は、人間国宝・巨匠コーナーとなっていて、現在は17人の作家の作品が展示されています。
蒔絵など日本の伝統工芸作品の超一級品も見ることが出来るので、オススメです


art 22:59 comments(0)
フランク・ブラングィン展
国立西洋美術館開館50周年記念事業として開催されている「フランク・ブラングィン展」に行ってきました。

“フランク・ブラングィン”という名前は聞いたことがなかったんですが、夏目漱石の「それから」に名前が登場していたり、日本とは縁が深い画家さんだったってことは、チラシを見て初めて知りました。

コントラストの効いた色彩と、絵画でありながら装飾のセンスを感じる画面構成。
駅に貼られていた告知ポスターがとても印象的で、「これは観に行かねば」と思ったのでした。

日曜日の閉館まで1時間というタイミングで行ったので、そんなにお客の入りもなく、じっくり作品の前に立つ事ができました。
期待に胸膨らませて行った会場。想像以上によかったです
この展覧会は是非観て欲しい

全く事前勉強なしに行ったこともあるんですが、フランク・ブラングィンという人の才能の多彩さに驚かされっぱなしでした。
画家、建築家、空間デザイナー、工芸デザイン、壁画作成、版画、本の装丁、グラフィックデザイナー。
どれもブラングィンの実績を語る上では欠かせないものばかりです。
ポスターから感じた装飾センスも、これだけの仕事をしていれば納得

国立西洋美術館の礎となった松方コレクション(現・川崎重工業の初代社長・松方幸次郎)。
松方はブラングィンの美術活動を援助し、ブラングィンは松方の美術品蒐集を助けるという間柄で、いぅれは日本に松方のコレクションを展示する「共楽美術館」建設を計画していたとのこと。

しかし、第一次世界大戦や関東大震災によってその夢は果たせず、さらにはロンドンにあった松方の美術品倉庫が火事にあい、コレクションの大半が焼失してしまったそうです。

この展覧会では、ブラングィンがデザインを手掛けた共楽美術館の内装を再現した展示室が用意されており、時代に翻弄された2人の熱意と友情が2010年になり(一部ではあるけれども)ようやく夢が形になった展覧会と言えるかも知れません。

気付けばあと2室も残しているタイミングでそろそろ閉館ですのアナウンスが流れる事態
じっくり観すぎたみたいです
最後の版画と装丁コーナーは駆け足で見てしまったので、あともう1回観に行きたいなぁ〜。

8カ国37箇所の美術館や個人コレクションから集められた123点が一堂に会しています。
あまり馴染みのない作家さんだけに、とても新鮮な気持ちで作品を見ることができると思います。
アール・ヌーヴォーやアール・デコが好きな人には特にオススメ

国立西洋美術館で5/30まで開催中。

http://www.fb2010.jp/

TOPページでいきなり職業診断ができます。ミステリアスな感じでちょっとドキドキ。
しかもtwitterでつぶやけると来た。
art 22:20 comments(0)
東京都現代美術館で過ごす休日
東京都現代美術館に行ってきました。
お目当ては、井上雄彦氏によるエントランス・スペース・プロジェクトと、「ラグジュアリー:ファッションの欲望」展。

チケット売り場から常設展示室へと続くエントランススペース(自信はないけどたぶん50mくらいはあると思う;)に、井上雄彦氏がこのプロジェクトのために書き下ろした作品が並んでいて、最後には高さ7.2m、幅6mの宮本武蔵が「これでもかっ!」っていうほどの存在感を放っています。
上野の森美術館で行われた「井上雄彦 最後のマンガ展」でも感じたけど、この人はもう漫画家っていうより美術家だなぁと改めて思いました。

和紙と墨、そして筆で描く一発勝負の世界。
黒の濃淡で人の躍動感まで描ききってしまう描画力は、マンガの登場人物=“キャラクター”という枠を超えて、人物画という美術作品として完全に成立させているし、見る者を圧倒する力があります。

テーマは、強い自分を追い求める一方で人を切ることを通して淋しさや虚しさを感じている幼い日の武蔵の心が揺れ動く様を描いています。
「バガボンド」ファンの方は是非ご覧あれきっとこれはどこにも巡回しないハズ。

続いて「ラグジュアリー:ファッションの欲望」展へ。
17世紀から現代まで時代の最先端ファッションを一望するという展覧会。

【着飾ることは自分の力を示すこと】と題されたスペースでは、フランスの宮殿服やイギリスの総レースのドレスなど当時の流行と贅を極めた職人芸のオンパレード
糸1本取っても金糸や銀糸を使用していたり、柔らかな光を放つパールや眩い光を放つ玉虫、そして繊細且つ豪華な刺繍。
どれもこれもうっとりするほど美しくで、「素敵」っていう言葉しか思い浮かんできませんでした

マリー・アントワネットがやったと伝わる髪の上に帆船の乗せちゃったドレスも登場
「さすがにやりすぎでしょ」って思ったけど、思い返せば今のキャバ嬢さんたちの“盛り”も同じようなことをしてますね
歴史的なものに紛れて、現代のデザイナーの作品も陳列されています。
前述の帆船ドレスの横にいたのは、ヴィクター&ロルフの作品。タイトルは「装飾されるべき贈り物」。
どんなドレスかと申しますと…体にリボンが巻きつけたようなデザイン
体にリボンを巻いて、「私自身がプレゼント」を具現しちゃったドレスでした。

時代は進み、19世紀のレースドレスや第1次大戦後アール・デコ期のドレス(この時代のは胸がないほうが似合うデザインが多いのがかわいい!)、月にアポロ11号が下り立ったことに刺激されたファッション界の宇宙をイメージしたものなど、20世紀に入ってからのファッションの流れは、まさに激流
性別によって決まっていたドレスの基本的なフォルムを打ち崩し、どんどん多様なデザインが生み出されてきた時代。中には「これ、米米のステージ衣装ですか?」っていうほど奇抜なものもありましたw

続いては【削ぎ落とすことは飾ること】スペースでは、タイトルどおり装飾を可能な限り削りながらもデザイナーの個性を盛り込んだものが整然と並んでいます。
私でも知っている有名どころだけでも、シャネル、ディオール、ヴァレンシアガ、イヴ・サンローラン、クレージュetc…。
女性らしさと女性の社会進出を助ける機能性を兼ね備えた、どれもシンプルなフォルムのものばかり。
それでも贅沢感があるのは、デザイナーの名前の力だけではなくて、そこにちゃんとデザインがプラスされているから。
ただの服ではなく、デザイナーの作品として成り立っているところが、まさにブランド力なんだろうなぁ。

【ひとつだけの服】コーナーはとても狭いんだけど見応え十分。このスペースは、メゾン・マルタン・マルジェラの遊び心溢れる1点ものが紹介されています。
素材が実にユニーク
割れた陶器、切り刻んだレコード、ミラーボール、トランプ、油絵のキャンバス、靴紐、さらには飾付け用のゴールドテープまで。
こんなものを素材として使っちゃうんですかっていう数々が並んでいます。

【冒険する精神】は、コム・デ・ギャルソンの川久保玲の作品と金沢21世紀美術館の建築を手掛けた妹島和代による空間デザインのコラボレーション。
透明な曲線パネルの中に配された服を歩きながら眺めるコーナーなんだけど、平らなものから生まれる曲線の世界でまるで服(デザイン)の迷路に迷い込んでしまったような、不思議な感覚になるとても興味深い展覧でした

ファッションについて専門知識は全くない私だけど、かなり楽しめました
今年の流行語に「ファストファッション」が選ばれたけど、これを見た直後はどんなに安くても買う気になれないなぁ
贅沢なものを買いたいっていうわけではなくて、安いっていう観点だけじゃなくて好みとか自分のスタイルとか、そういうものを一度じっくり考えてみるのもいいんじゃないかな?って思わせてくれる、そんな展覧会でした
art 21:33 comments(2)
古代ローマ帝国の遺産展―栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ
国立西洋美術館会館50周年事業である「古代ローマ帝国の遺産」展に行ってきました。
名を変え品を変え、いろんな古代ローマ展が開かれるけどどれも盛況を博していて、「日本人ってホント古代ローマが好きだよなぁ」と思いながらも、結局私も観に行ってしまう古代ローマ好きな一人のわけで

さて、今回の展覧会はサブタイトルにもあるとおり「栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ」がテーマ。
華やかな栄華の極みを集めたというよりは、帝国の歴史と人々の生活にスポットをあてた展覧になっていました。

第1室は、ディオクレティアヌス帝時代の彫像が並んでいます。
真っ白で美しい彫像が並ぶ室内は、厳かな雰囲気が漂っていました。
足の甲に浮き出た血管とか生々しさを感じるほどだし、柔らかな布の表現は本当にいつ見てもお見事
まだ絵画も壁画くらいしかない時代だから、“美”は彫像であったり彫刻であったり立体化することで表現されていたんだなぁってしみじみ思いました。
もちろん形に残すってことは権威の象徴でもあるわけですが。職人の技術の高さには驚くばかりです。

続いての部屋は、主にフレスコ画の展示。
「部屋を飾る」というよりは「壁に描く」という表現のほうが当てはまるフレスコ画。
ギリシャ神話の一場面が描かれていることが多いんだけど、それも実に人間らしい神様ばかりで、人々の生活にギリシャ神話信仰が根付いていたんだなぁということがわかります。
キリスト教も生まれたばかりくらいの時代だから、宗教画がないのが新鮮でした。
“新鮮”って言っても紀元前後の時代だから、かれこれ2000年くらい前のフレスコ画を見ているわけで、そんな前のものが今ここにこうして残っていること自体すごいことだって改めて思ったり。

その他、ガラスや秤、器など生活に必要な道具も多く出品されています。
一つ一つ造形美の素晴らしさには驚くばかり。
一際人気を集めていたのは、やはり金貨や金細工のコーナー。
ローマの栄華を物語る煌びやかなコーナーは、その細かな細工や金貨の彫を見ようとたくさんの人が並んでいました。

最後の部屋は、ポンペイの「黄金の腕輪の家」の壁画と噴水のあるモザイクドームが展示されています。
シックな赤の壁の部屋に、高さ3メートルくらいありそうなフレスコ画は圧巻モザイクドームも素晴らしい
部屋を出た後に用意されている映像コーナーで、これらがどのような家でどんな風に使われていたのかが放映されています。
「これが自宅なの?!豪華なリゾートホテルじゃん」っていうほどの贅を極めた生活っぷりは、ただただ羨ましいばかり。
こんな優雅な生活をしていたのに、突然の火山の噴火で街ごと沈み18世紀まで発見されなかったなんてドラマチックにも程がある。

特にどこにターゲットを絞っているわけでもなく、まんべんなく網羅してみましたみたいな展示だったのでちょっと物足りなさも感じましたが、最後の「黄金の腕輪の家」の展示はとても良かったです。
中学生の校外学習?みたいなグループのたくさん来ていたので、古代ローマ入門編の展示としては最適な気がします。
本音を言うと、一般1,500円はちょっと高いかなぁ…っていう気もしますが



art 19:14 comments(0)
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スイーツレポートばかりとなったブログ。
読んだ人が「食べてみたい!」と思ってもらえたら嬉しいなぁ。
そんなことを願いながら綴っています。
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